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2012年07月16日

山形県知事インタビュー(1/3)

山形県知事インタビュー(1/3)

青木:
 
吉村知事、本日はお忙しい中ありがとうございます。今回は女性の知事ということでお会いできる事を楽しみして参りました。現在、日本全国で女性の知事は何名いるでしょうか?

知事:
 今の所、北海道、山形、滋賀の3名です。

青木: 
 今3名もおられるのですね。つい最近までほとんどいなかったですよね。今、日本には47の都道府県があって、長い間ずっと女性知事がほとんどいなかったような状況の中に、知事になられるまでの経緯を少しお話くださいませんか?

知事:
 はい、私は大学を卒業してから、広告出版の一般企業に就職し、3年4ヶ月勤務いたしまして、その間に結婚し、妊娠しましたので出産の為に退職しました。そして、故郷である山形県に戻って参りました。以後、専業主婦を20年ぐらいやっていまして、夫は弁護士をやっていましたが、夫が病気で他界した後に、私は社会復帰しました。
 大学時代に心理学を学んでいたので教育相談の仕事に復帰をしまして、2年間不登校のお子さんと関わりもあり、山形県の教育委員に推薦されまして、その間に県の方から入札監視委員、総合政策審議会など様々なお仕事を体験させていただきました。そのようなこともあったかと思いますが、知事選挙に出馬してくれと要請を受け、一大決心をいたしまして選挙に出馬し、知事に当選することができました。山形県知事としては50代目の知事になるのですが、女性の知事は初めてで、東北6県ありますが、ここでも女性知事は初めてということです。当選して今4年目に差しかかったところです。

青木: 
 なるほど、知事になられるまで、一般企業に勤められて、それからご結婚、ご懐妊を機に会社を辞められ、長年主婦の生活を送っておられた所に、知事選に担ぎだされる。普通ではありえないお話ですね。しかし、こうしてお会いしお話を伺っていますと、知事選に担ぎだされるのも不思議でない、そう思いますね。知事はやはり政治家としての資質を持ち合わせておられ、ただ、今まではそのような一面を持っておられることをご本人も含め、周りの方々も気づかないでいただけかもしれませんね。しかし、そうは言っても、知事とは全県民の運命を握っていると言っても過言ではない重要なお仕事で、それを背負って行く気概と覚悟がなければ、とてもできないお仕事ですよね。知事選出馬の要請を受けた時に迷いはなかったのですか?

知事:
 迷いましたね。元々私は政治家になりたいと思った事はありませんでした。ただ、政治というのは本当に大事なものだと私は若い頃から思っていまして、政治家を選ぶ選挙時の投票を怠った事は一度もなく、必ず投票には行っておりました。選挙で選ばれた政治家が政治をやって政治が私たちの生活の隅々まで及ぶわけですよね。政治ほど大事なものはないという意識は持っていました。 

青木: 
 それは大変なご決断をなされて知事になられたということですが、国際社会とくらべて今、日本国内において政治分野の女性リーダーが本当に少ないと思いますね。そのような社会環境の中で、知事になられてから女性知事ということで、壁にぶち当たったり困難に直面したりするようなことがありましたか?

知事:
 総体的な結論から言えばないと思います。というのも、周りは女性知事として見てくださるのですが、私自身はそのような意識はありません。私はあくまでも一人の人間としてやっていますので、男とか女ではなく人間としての私が政治をやっているので、男だからとか女だからという視点で考えないでやっています。
けれども、逆にその中で女性ならではの視点が入っているのではないかと思う時もあります。
例えば、昨年の東日本大震災の対応ですが、妊婦さんと乳幼児だけの為の避難所を設けたんです。それは山形県だけだと言われました。そういった乳幼児や妊婦さんが集団の中で生活するのは、赤ちゃんも泣きますし、お乳もあげないといけない、周りにも迷惑がかかるし、本人も気が引けたりしますから。私は自分自身の子育ての体験からそれは別の所があった方がいいと思いました。そういう女性の視点というのは男性ではできないと思うので、両方の視点が必要だと痛感しましたね。ですので、女性の政治家がもっと増えることが必要だと思います。

青木: 
 政治は人々の生活に密接していることが多く、人々を幸福にするために政治があるのですから、女性の視点は勿論、あらゆる視点が必要だと思いますね。しかし、今の所で日本の社会はまだまだそこまで辿り着いていないというのも事実ではないかと思いますね。長い間男性知事に慣れてきた県庁職員の中で、女性知事が誕生したことに対して戸惑っておられるなと感じることはございますか?あるいは、社会の中でも同じ、県民の皆さんが女性知事だからと特別な目でみられるということはありましたか? 

知事:
 ないと言うのは嘘になりますね。当選した最初の1年は私の服装やお化粧に対するご意見や感想が多かったので、ビックしましたね。そこは男性の知事にはない県民の皆さんの視点だと思いました。

青木: 
 そうなのですね。それって、やはり県民の皆さんはやはり女性政治家に対するある種のアレルギー反応なのでしょうかね。しかし、日本もしかり、アジア地域というのは女性が政治の領域に参加するという歴史が浅く、しかも、絶対的な数が少なかったので、ある意味しかたがない部分もありますね。女性の政治家の数が多くなってくれば、国民、県民の意識も、物の見方も変わってくるのではないかと思いますね。

知事:
 それが自然の形になればいいなと私は思います。子どもが育つ時にはおじいちゃん、おばあちゃん、お父さん、お母さんがいるのが当たり前の環境ですよね。社会に出てからもそういう環境の方が自然体で暮らしやすいのではないかと思いますし、職場でも男性も女性もいてその中で伸び伸びと能力を投与したりすることが必要だと私は思っていますね。
ただ、これが進むには教育などすごく大きいと思っております。私達の時代では考えられなかったことですが、私達の子どもの世代からは、学校の家庭科の科目も男女一緒に学習するようになりましたから、その辺りから感覚が少しずつ変わってきていると思いますね。
社会的背景というか育つ環境の中での価値観というのがとても大きく影響すると思うので、これは、一人ひとり個人的な思いというより、社会的な仕組みが背景から変えていかないと中々難しいのではないかと思うのです。 

青木: 
 私もまったくそうだと思います。人々の価値観は学校教育や家庭環境によって出来上がるのですから、教育が非常に重要ですね。



次回につづく >>

 



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Posted by 青木麗子 Reiko Aoki at 10:00│Comments(0)日本と中国
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